看護師として10年間働いてこられた足立さん。
企業研修で穴水を訪れ、たまたま移り住むことになったそう。
そこから空き家を紹介してもらい、2018年6月に「ウミネコパーラー」がオープン。
空き家だった場所が、今はこうして地元の人も遠方の人も、わざわざ訪れるカフェになった。
リノベーションする時に、土倉さんの一家が設備屋さんだったこともあり、共に取り組んで完成させたそう。そして、足立さんがデザインを加え、今の「ウミネコパーラー」が誕生した。
そんな、空き家からお店を創り上げるまでの過程を、おふたりから伺っていると自然に笑顔がこぼれる。仲の良い会話を聞きながら、このお店から感じる「ほんわり暖かい空間」に納得した。
片方だけが頑張っても、片方だけが一生懸命でも、それは想いが偏ったお店になる。
でも、ここは違う。
空き家をリノベーションした時から、構成もデザインも、それぞれにふたりの力が注がれていた。
そうやって誕生した「ウミネコパーラー」は、力と想いのバランスが保たれている。
それがあまりにも自然に、お店の空気に溶け込んで、ここに訪れた人を心地良くしている。
この空間は、ふたりの偏り無い力で創られたもので、このふたりにしか出せないもの。
失敗してもゼロに戻るだけ
10年間働いてきた看護師の道から、お店を開く道に向かうことへの不安は大きかったのではないだろうか。
しかし、オーナーの足立さんは笑顔でこう語る。
「お金の不安もなかったし、それ以外の面での不安もなかったですね。何かあったら看護師の仕事があるし…。いや、もし、看護師の資格がなかったとして、失敗してもゼロに戻るだけだし。もちろん、もしお金がなくなったらと、いざという時の戦略は一応考えますけどね。」
この言葉に、彼の本当の強さが現れているように思えた。
失敗してもゼロに戻るだけ。
当たり前のことなのに、それがなぜか怖くて、一歩踏み出せない。
上手くいくか分からない、失敗がどれだけ大きいものなのか分からない、立ち直すだけの力が自分にあるのか分からない。
でも、踏み出さないとそんな不安が本当に存在しているかも分からないよね。
踏み出して広がった経験は、必ずその人を強くする。だから、今の弱い自分の頭では考えられなかったことも、考えられるようになって。きっと、失敗した壁を乗り越える方法を、考えることが出来るようになっている。足立さんから感じる強さと、言葉にそう確信した。
挑戦することの楽しさよりも、つい先の不安を考えてしまう、今の私の背中をも押してくれた言葉だった。
能登の食材を使用した手作りシロップのかき氷
6月にお店をオープンさせた前は、イベント出店でかき氷を販売していた。
今でもお店の中心メニューのかき氷は、無添加無着色で、能登の果物や食材を使っている。
少しでもキズが入ったり、見た目がよくないと販売することが出来ない、農業の厳しい世界。
そんな、質は良いけれど、売れなくなった能登のおいしい果物たちを譲り受けたり、購入してスイーツにしている。
「ここのかき氷を食べて、初めてかき氷が美味しいと思ったんですよ。」と土倉さん。
シロップ漬けなのに、実は崩れること無く、程よくやわらかいのに、シャキシャキしている。
果物の素材の味を感じるシロップ漬けに、初めて出会った。
シロップ漬けにすると、その甘みが強くて果物の味が分からない。でも、このウミネコパーラーのシロップは丁寧に手作りされていて、まるで果物を食べているような感覚になる。
土倉さんが、自分のお店の味に惚れる理由がよく分かる。
使用されているかぼちゃは、もちろん穴水で採れたもの。
この辺りは赤土で、鉄分を多く含んでいるため、甘みが強いのだとか。
重くてもったりしたクリームを、冷たいかき氷にのせていただく。
温度は全然違うのに、なぜか冬にかぼちゃスープを飲んだときの、ほっこりを感じる。
優しい甘さの手作り焼き菓子
かき氷はもちろんのこと、手作りの焼き菓子も充実。
私が訪れた時も、沢山の種類のマフィンやスコーンが小さなウィンドウに並んでいた。
香ばしくて甘い香りには勝てず…。
キャロットケーキと、ぶどうandアールグレイのマフィンもいただきました。
キャロットケーキ大好き人間なのですが、ここのスパイシーさと甘さのバランスに惚れました。
毎日食べたい!
ぶどうが入っているマフィンって珍しい。
大粒のぶどうはとても甘い。そこに、アールグレイの香りが交わります。幸せだな~。
やってみなくちゃ分からないモーニング
「やってみないと分からないんでね。
とりあえず、やってみて、上手くいかなかったらやめます。笑」
夜カフェは始めてみたものの、あまりお客さんが来ず、モーニングへ変換(夜カフェ行きたかった!)。何でもやってみる姿勢が、どんどん素敵なお店を創り上げているんだろうな。
朝からバターたっぷりのトーストと、ウミネコブレンド。素敵な1日を始められそう。
おふたりが創る「ほんわり暖かい空間」。
その中で、棚に並んだ好きな本を楽しみながら。
テーブルに能登の食材たっぷりのスイーツが並んだら、思いっきり素材と優しさを味わって。
そんな、とびっきり幸せで温かい時間を「ウミネコパーラー」で。
メニューや営業時間等は訪問時のものになります。詳しくは「ウミネコパーラー」のインスタグラムをご確認下さい。
住所 :石川県鳳珠郡穴水町新崎2-11
アクセス:穴水駅から車で約11分
電話番号:070-4420-7274
営業時間:金 11:00~18:00/土 8:00~18:00/日 8:00~16:00
定休日 :月~木